「地方から東京に来てすぐに生活保護を利用したい」方へのガイド
最終更新:2026年9月3日
これは何?(免責事項)
現在、いわゆる地方(遠方)に住んでいる方から、
「今いる地域を離れて、東京で生活保護を利用したい」 「家を出て東京に行き、生活保護を利用して一人暮らしをしたい」
という相談がかなり増えています。私たちに届くメール相談でも、こうした相談が全体の1割を超える状況になっています。
このページはいわゆる「問題提起」を目指すものではありません。東京に来て生活保護を利用する場合、実際に何が起きるのか、どのような選択肢があるのか(あるいは無いのか)をまとめたものです。
一方で、これは路上状態に置かれた方の緊急支援をしてきた団体による、ごく限られた現場からの視点です。断言がすぎるところがあり、実際には使える制度——時間はかかるけれど利用できる制度——を、「緊急支援には間に合わないから」という理由で切り捨てた書き方をしています。応急処置に寄りすぎているかもしれません。
ですので、あくまで「緊急対応を続けている団体の、現場視点のTips」として捉えてください。
制度や東京の状況はどんどん変わります。必ず「最終更新日」を確認してください。
結論:東京に来て、生活保護を利用してアパートを借りて暮らすことは可能?
制度上は可能です。
ただし、「東京に行く → 生活保護を申請する → すぐアパートを借りて一人暮らし」という流れになるとは限りません。
むしろ現在の東京では、所持金がほとんどなく、住まいもない状態から生活を立て直すのは、精神的にも肉体的にもかなり負担の大きい方法になっています。
特に、
- 東京に知人や頼れる人がいない
- 所持金がほとんどない
- 心身ともにかなり疲れている
- 共同生活や集団生活が難しい
- 「東京に行けば支援団体が部屋を用意してくれる」と考えている
という場合には、上京前に実際の状況を知っておいてください。
考え方
生活保護は、住まいを失った人が生活を立て直すためにも利用できる制度です。「住所がないから生活保護を申請できない」ということではありません。
一方で、生活保護を申請できることと、希望する住環境ですぐ生活を始められることは別です。
ここが非常に重要です。現在の東京では、「所持金がない状態でゼロから生活を立て直す」ための住まいの選択肢がかなり少なくなっています。
すでに地元で生活保護を利用していて、東京で新たに受け直したい場合
この節は、いま生活保護を利用している方に向けたものです。ここだけは、順番を間違えると取り返しがつきません。
まず、飛び出さないでください。
生活保護は、原則として二つの自治体から同時に受けることができません。地元の保護が続いたままだと、東京で新たに申請しても手続きが進まない可能性があります。地元の保護を廃止しないかぎり、東京では使えないと考えてください。
「廃止された」と思っていても、確認してください
いちばん行き違いが起きるのがここです。「転居の意思を伝えた」ことだけでは、生活保護が正式に廃止されたとは限りません。
次の2点を、必ず担当窓口へご確認ください。
- 何月何日付で廃止となっているか
- 「保護廃止決定通知書」など、廃止日が明記された書面が発行されているか
「生活保護を何月何日付で廃止する」と書かれた通知を受け取ること。書面が間に合わない場合でも、せめて口頭で日付を確認すること。ここがあいまいなまま動くと、東京で身動きが取れなくなります。
廃止には時間がかかります
当月分の保護費をすでに受け取っている場合など、廃止日が翌月以降になることもあります。いまは、廃止までに1か月ほどかかる可能性があります。
廃止日までのあいだは、東京で利用できる制度が大きく制限される可能性があります。まずは現在の保護の状況を正確に確認することが必要です。
地元でアパートを借りている場合は、解約も必須です
生活保護は現在地で受けられます。ただし、賃貸を借りている場合、そこが居住地として認定されます。
家財も契約もそのまま、鍵も返さずに東京へ来られると、トラブルになります。地元の部屋を引き払う手続きは、避けて通れません。
賃貸の解約は1か月前の予告が普通です。ここでも時間がかかります。
いちばん避けてほしい状態
飛び出しても、よい結果になりません。命に関わります。
たとえば、次の3つが重なった状態です。
- 地元で生活保護を廃止しないまま、保護費を持って飛び出した
- 賃貸も借りていて、解約もしていない
- 都内でネットカフェなどの宿泊費と移動費に、今月もらった保護費を使い果たした
こうなると、公的な支援も民間の支援も、何も使えません。極めて厳しい状況になります。
どうか、この「詰み」の状態だけは避けてください。動く前に、地元の福祉事務所へ確認することから始めてください。
ペットを連れている
ペットを連れて移動したい、という方はとても多くいらっしゃいます。そして、この状況は非常に苦しいです。
まず、ペットを連れて入れる施設がありません。ペットと一緒に入れるシェルターを作っている民間団体もありますが、繰り返しになりますが、そこも埋まっています。
そして、都内の家賃が高騰しているため、住宅扶助費の範囲でペット可の物件を借りるのは、至難の業です。探しても見つかりません。
「お金がない」状態で、東京でペットを飼い続けることは、相当に厳しいのが現実です。
誤解を恐れずに言えば、ペットは「社会保障のない子ども」です。守ってあげられるのは飼い主しかいません。
ペットを大切な家族だと思うのなら、その家族のために、あえてその場所から動かない(今いる場所で暮らし続ける)という選択も、現実的かもしれません。
受け入れがたい話だと思います。ただ、これはトレードオフの問題です。動くことで守れるものと、動かないことで守れるものを、天秤にかけて考えてみてください。
東京に来た直後、どこに住むの?
東京に来た時点で住居が決まっていなければ、基本的には住まいがない状態で福祉事務所に生活保護を申請することになります。
その後の一時的な居所として、主に考えられるのは、
- 民間支援団体のシェルター
- 行政などから案内される無料低額宿泊所等
- 簡易宿泊所(いわゆる「ドヤ」)
- 一部の自治体ではネットカフェ等
- 女性の場合は、女性専用の施設
などです。ただし、それぞれかなり事情があります。
このうち2の無料低額宿泊所は、実際にはいちばん案内されやすいところです。「無料低額宿泊所しかない」と言われたらに別立てでまとめています。あわせて、住まいを探すときに気をつけていただきたい「貧困ビジネス」についても、別の節にしています。
民間支援団体のシェルター
ほぼ埋まっています。
つくろい東京ファンドを含め、いわゆる「貧困ビジネス」的ではない民間支援団体が運営している個室シェルターは、現在ほぼ常時満室です。
そのため、「東京に行けば、支援団体の個室シェルターに入れてもらえる」とは考えないでください。現実問題として、すぐに入居できる可能性はかなり低いです。
これは特定の支援団体が支援を断っているというより、そもそも東京全体で利用できる部屋が足りていないという状況です。
簡易宿泊所(いわゆる「ドヤ」)
簡易宿泊所を一時的な居所として生活保護を利用する方法もあります。ただし現在は、こうした宿泊施設にも、老朽化による廃業や、海外からのバックパッカーの流入などにより、空室が少なくなっています。
自治体に生活保護を申請し、いわゆる「ドヤ保護」が認められたとしても、多くの場合はリストを渡されるなどして、自分で探すかたちになります。福祉事務所が探してくれるわけではありません。福祉事務所としては、無料低額宿泊所に入ることを勧めるためです。
そうしたリストに片っ端からあたっても空室はゼロ、あるいは空いていても、あまり評判のよくないところが1室だけ、ということも珍しくなくなりました。
また、安価な部屋ほど、建物が古い、風呂やトイレが共同、部屋が非常に狭い、衛生環境が厳しいなど、住環境がかなり厳しい場合があります。
ネットカフェで生活保護は受けられる?
都内23区でも、ネットカフェを一時的な居所として認める運用をしている自治体はかなり限られています。
具体的な自治体名については、このページでは掲載しません。特定の自治体に相談が集中すると、結果的にその運用自体が難しくなる可能性があるためです。
また、ネットカフェで生活すること自体、決して楽な選択肢ではありません。個室性、睡眠、荷物の管理、衛生面など、長期間生活する場所としてはかなり負担があります。
1泊に使えるのは、2,250円ほどです
まず、いわゆる「ネットカフェ保護」といっても、1日中そこにいられるわけではありません。
宿泊費に使える金額は、住宅扶助費の特別基準69,800円を31日で割った、1日あたり2,250円程度です。
いま宿泊費そのものが高騰しているなかで、この金額で一晩(夜7時間ほど)を過ごすのは厳しくなっています。実際には住宅扶助費だけでは足りず、生活扶助費から毎日1,000円程度を補填することになります。
つまり、本来は食費にあてるはずのお金が、毎日削られていきます。ここがだいぶつらいところです。
朝出たあと、昼間をどこで過ごすか
1日中いられないので、朝に出たら、日中はどこかで過ごすことになります。図書館などにいる方が多いです。これも、所在がなく、楽ではありません。冬は寒く、夏は暑い。
日々減っていくお金をやりくりする力と、日中の時間をお金を使わずに過ごす力が要ります。サバイバルではあります。
女性施設(女性限定)
住まいを失った女性の場合は、男性と違い、女性専用の施設に入所できる場合があります。
ただし、ここも共同生活です。ペットなどとは一緒に入れません。
また、DVから逃げてきた方などが一緒に暮らしている場合が多いため、外部との連絡が制限されています。携帯電話の使用が禁止され、自分の独立した住まいに移るまでの数か月間、スマホが使えないというパターンが多くあります。
そのため、それが合わずに出てしまう方もいます。出ること自体は構わないのですが、ほかの選択肢が少ないというのが正直なところです。
そのほかの選択肢として、女性の場合は宿所提供施設に入所できる可能性もあります。こちらは女性施設より自由度が高いですが、必ず選べるわけではありません。
「貧困ビジネス」に注意——「すぐ入れます」「全部支援します」という住まい
現在はとにかく、所持金が少ない方や生活保護を利用する方が、すぐに入れる住まいが非常に少なくなっています。
その一方で、インターネットやAIなどで検索すると、
- 「生活保護申請の方でも即入居できます」
- 「初期費用不要」
- 「食料やお金、携帯電話も支援します」
- 「生活保護申請もすべて手伝います」
- 「LINEだけで相談できます」
といった、一見すると非常に手厚く見える団体や業者も多く出てきます。
もちろん、こうした団体や事業者のすべてに問題があるわけではありません。実際に、生活保護を利用する方の住まいや申請を適切に支援している事業者もあります。
ただ一方で、私たちのところには、
- 入居してから、事前に説明されていなかった費用を請求された
- 生活保護費の大部分を宿泊費や食費などの名目で徴収された
- 自由に使えるお金がほとんど残らなかった
- 本人の希望とは関係なく施設での生活を続けるよう求められた
- 通帳やキャッシュカードを事業者側に管理された
といった、いわゆる「貧困ビジネス」に関する相談も寄せられています。
住まいがなく、所持金も少ない状態では、「今日から入れます」「お金はいりません」「全部こちらでやります」と言われると、とても魅力的に見えると思います。ただ、こうした「条件が良すぎる話」については、慎重になってください。
最低限、ここは確認してください
具体的な事業者名をここで挙げることはできませんが、少なくとも次の点は確認してみてください。
- 運営している法人名・会社名がきちんと記載されているか
- 代表者名が公開されているか
- 団体名や代表者名を検索した際に、公式サイト以外にも活動実績や第三者による情報が確認できるか
- ウェブサイトの写真や画像が、フリー素材ばかりになっていないか
この4点だけで、安全な事業者かどうかを完全に判断できるわけではありません。ただし、上記4点すら確認できない団体については、いわゆる「貧困ビジネス」の可能性も考えて、特に慎重になったほうがよいと思います。
「NPO」を名乗っているなら、内閣府のサイトで実在を確かめる
NPO法人(特定非営利活動法人)は、内閣府のNPO法人ポータルサイトで検索できます。法人名で引いて、実際に登録があるかを確かめてください。名乗るだけなら誰にでもできます。
なお、このサイトに載っていること自体は「国のお墨付き」ではありません。掲載されている情報のうち法人が自分で登録した部分について、内閣府は内容を保証しないと明記しています。実在の確認に使うものと考えてください。
「不動産業者」を名乗っているなら、免許番号を確かめる
まず、宅地建物取引業者の免許番号がサイトに載っているかを見てください(「東京都知事(○)第○○○○○号」のような表記です)。
載っていれば、国土交通省の検索システムで実在を確認できます。そもそも載っていない場合は、その時点で慎重になってください。
ホームページが無く、SNSとLINEだけのところ
そもそもホームページが無く、InstagramやTikTokなどのSNSだけで集客し、連絡はLINEのみ——というところは、かなり「黒より」です。
法人名も所在地も免許番号も確かめようがなく、あとから連絡が取れなくなっても追いかけられません。
さらに可能であれば、
- 入居後に毎月いくら支払うのか
- 食費や管理費はいくらなのか
- 生活保護費から自分の手元にいくら残るのか
- 通帳やキャッシュカードを預ける必要があるのか
- 退去したいときに自由に退去できるのか
- アパートへ移りたい場合に支援してもらえるのか
について、入居する前に具体的な金額や条件を確認してください。口頭で「大丈夫です」と言われるだけではなく、可能であれば書面やメッセージなど、あとで確認できる形で説明を受けてください。
特に、「通帳やキャッシュカードをこちらで預かります」「生活保護費はこちらで全部管理します」と言われた場合は、その場ですぐに渡さず、別の支援団体や福祉事務所などにも相談することをおすすめします。
住まいがない状態では、「とにかく今日泊まれる場所を」という気持ちになるのは当然です。だからこそ、困っている状況につけ込まれて、あとから身動きが取れなくなることだけは避けてほしいと思っています。
「無料低額宿泊所しかない」と言われたら
住まいのない状態で生活保護を申請すると、ほぼ100%、行政から無料低額宿泊所を案内されます。
施設によって環境はかなり異なります。都内は個室化が進んでいます。一方で、
- 風呂が共同
- トイレが共同
- 食事場所が共同
- 生活上のルールがある(掃除当番など)
- 生活扶助費の部分が食事代やその他の費用として差し引かれ、手元に約1万円台後半から2万円しか残らない
といったことがあり、いわゆる一般的な暮らしをされてきた方は、面くらうと思います。また、「東京の○○区で暮らしたい」と思って上京しても、必ずしもその地域にある施設を利用できるわけではありません。
このページは、ここで問題提起はしません
冒頭でも述べたとおり、このページは問題提起をするものではありません。
この仕組みをお世辞にもよいとは思っていませんし、連携団体とともに改善を求めてもいます。一方で、歴史的な経緯から成立してきたものでもあり、すぐにすべてが無くなるとは思えません。
少なくとも、「あなた」が申請するときに、これを完全に避けるのは難しい可能性が高いという現実があります。一部の支援団体が「無料低額宿泊所は必ず避けられます」と宣伝したとしても、代わりに住む場所が無い、という現実は変わりません。ここでは、あまり踏み込みません。
もし入ることになったら、この4つを念頭に
- まず、アパートに移る許可が出るまで3か月。3か月だけがんばる、と考えてください
- 3か月してケースワーカーが「アパートへの転宅は認めない」と言ってきたら、そこは支援団体が手伝えます。「それは不当ではないか」と一緒に言えます
- 施設内で具体的な被害(同居している方からの盗難や暴力、管理人の言動など)があった場合は、記録を残してください。それをもとに、支援団体と連携して福祉事務所へ「別の場所を」と伝えられます
- 飛び出さないでください。施設を出て生活保護を廃止しても、また別のところで3か月のやり直しになります。保護を切らないことが重要です
私たち支援団体も、生活保護の申請に同行したあと、件数が多いために、その後の状況を把握しきれていないことがあります。1か月ごとくらいに近況をご連絡いただけると、バックアップしやすくなります。
ホテルから生活保護は利用できる?
一般的なホテルに自分で泊まり、「このホテル代を生活保護で払いながら、ここでアパートを探したい」という方法は、基本的には難しいと考えてください。
特に現在の東京ではホテル料金そのものが非常に高く、民間ホテルを長期間利用しながら生活保護を受けることを前提にはできません。
申請したら、すぐアパートへ移れる?
すぐには移れないことが多いです。
まず一時的な施設や簡易宿泊所などで生活しながら福祉事務所と相談し、その後、自分の賃貸住宅を探して転居する、という流れになることが一般的です。
人によりますが、転居が認められるまで最長3か月程度の運用になっています。運用上「まず3か月程度は現在の場所で生活する」という扱いになるケースが、かなり一般的です。
少し言葉を選ばずに言えば、その地域・現在の生活場所で一定期間安定して暮らせるか、途中で別の地域へ移動したりしないかを見たうえで、アパートへの転居を検討する、という運用です。
3か月程度そこで住んだのちに、そこからアパート探しを始めることになります。
また、現在の東京では家賃そのものがかなり上昇しています。生活保護の住宅扶助の上限額の範囲で借りられる物件が少なくなっている地域もあり、
- 物件を探す
- 福祉事務所に確認する
- 不動産会社や大家の審査を受ける
- 初期費用について福祉事務所と調整する
という作業が必要になります。「生活保護になれば自動的にアパートを用意してもらえる」という制度ではありません。
「番号ありスマホ・顔つき身分証明書・住民票」——アパートを借りるための三種の神器を死守してください
アパートを借りる段階で、ほぼ100%必要になるものが3つあります。
- 番号が生きているスマホ
- 顔つきの身分証明書(マイナンバーカードか運転免許証)
- 住民票
何があっても、この3つは維持してください。
番号が生きているスマホ
物件を申し込むときに、電話番号が必須です。絶対に維持してください。支援者とのやりとりも含めて、優先順位はなによりも高いと考えてください。
端末を売ってしまう方もいます。絶対に売らないでください。売ってしのげるのは数日です。そのあと、支援団体を含めて誰とも連絡が取れなくなります。
顔つきの身分証明書
これも必須です。有効期限に注意してください。
移動してしまうと更新ができません。移動するのであれば、更新を済ませてからにしてください。
あるとないとでは大違いです。そもそも、都内のネットカフェに泊まるにも必須です。
住民票
賃貸契約のときに提出が必須です。
身分証明書の住所と一致していることが大事です。ですので、移動を始める前に、確認して取得しておいてください。
一度「根無し草」になると、取り直すのに本当に時間がかかります
この3つは、いったん失うと、再取得までに本当に時間がかかります。逆に、維持し続けていれば、そのあとの手続きがいろいろスムーズです。
「保証人」は、いまはほぼ要りません
「保証人を頼める人がいない」と心配される方が多いのですが、現在は保証会社を使うのがほぼ100%です。保証人は必要ありません。
一方で、緊急連絡先を親族に限るという指定は多くなっています。ただし、これは物件によります。探し始める前から気にしていても仕方がありません。
支援団体に相談したら、何をしてもらえる?
私たちを含め、東京の民間支援団体には、遠方から非常に多くの相談が寄せられています。ただし、東京の支援団体が、
- 上京するまで継続的に遠隔支援する
- 地元まで迎えに行く
- 東京に来た日の宿泊先を必ず確保する
- シェルターを予約しておく
- アパートを用意する
- 東京での生活全体を引き受ける
といった対応をすることは、基本的には難しいです。遠方からのご相談には、まずは現在住んでいる地域の福祉事務所や支援団体への相談をお勧めすることがほとんどです。
お住まいの地域の窓口は、全国の相談窓口にまとめています。生活保護のほか、税金の滞納や労働問題の相談先も載せています。
一方、実際に「あなた」が東京に来て生活保護を申請することになった場合、状況によっては福祉事務所への相談や申請に同行できる場合があります。
支援団体に相談すれば、シェルターに入れる?
繰り返しになりますが、シェルターはほぼ満室です。
相談を受けたことと、宿泊場所を提供できることは別です。相談会や支援団体に来ても、シェルターへの入居、ホテルへの宿泊、アパートの確保を約束できるわけではありません。
東京に着いた日の夜を、どこで過ごすか
東京に来たその日にすべての手続きが終わるとは限りません。特に、土日祝日、夜間、福祉事務所の開庁時間外に東京へ到着すると、その日のうちに生活保護の相談や申請ができない可能性があります。
上京する場合には、「東京に着いたその日の夜をどこで過ごすのか」を必ず考えておく必要があります。
所持金を交通費だけで使い切ってしまうと、非常に厳しい状況になります。
役所の窓口には、必ず「朝イチ」で行ってください
これは、このページでいちばん実用的な話かもしれません。
住まいがない状態で、
- 生活保護を申請したい
- 自立支援センターを利用したい
- その他、なんらかの宿泊支援を受けたい
という場合は、必ず朝イチで窓口へ行ってください。できれば窓口が開く8時30分の直後。せめて10時前には着いていてください。
行政の窓口なので、いわゆる「水際作戦」のような対応がなかったとしても、手続きそのものに時間がかかります。その日のうちに泊まる場所まで決まるには、少なくとも次の段取りを踏む必要があります。
- 状況の聞き取り(実態の把握)
- 受け入れ先の空き状況の確認
- 役所内部の決裁
- 実際にその場所まで移動する
これを、たとえば閉庁まぎわから始めるのは無理です。夕方に着いてしまうと、話は聞いてもらえても、その日の寝る場所は決まらないまま外に出ることになります。
とにかく、役所へ行くときは朝イチで。
東京に行く前に考えてほしいこと
少し厳しいことばかり書いています。しかし現在の東京は、本当に、「お金がない状態で、知らない土地に行って、ゼロから生活を立て直す」にはかなり厳しい街になっています。
東京に来た後には、
- 知らない福祉事務所の職員と話す
- 支援者と状況を説明する
- 自分のお金を管理する
- 施設のルールの中で生活する
- 物件を自分で探す
- 不動産会社とやり取りする
といったことを、自分で進めなくてはいけない場面がかなりあります。また、しばらくの間は、必ずしも快適とはいえない住環境で暮らす可能性があります。
家を出たい人へ
「家族と一緒にいるのがつらい」「一人になりたい」「今いる場所から、とにかく離れたい」という相談も非常に多くあります。
その気持ち自体を否定するつもりはありません。家庭内で強いストレスを受けている人にとって、今いる場所から離れることが必要な場合もあります。
ただ、今いる場所から逃げることと、東京で生活を立て直せることは別の問題です。
すでに心身ともに疲れている状態で上京し、その後さらに厳しい住環境や行政手続きを経験することで、かえって状態が悪化することもあります。
現在住んでいる場所に今日・明日にもいられなくなる状況ではないのであれば、まず現在の地域で、
- 生活保護
- 世帯分離
- 転居
- 一人暮らし
- DV・虐待等からの避難
- 地域の支援団体
などについて、一度相談してみることも選択肢です。
それでも東京に行きたい
ここまで読んだうえで、「それでも今いる場所にいることが難しい」「厳しい状況になる可能性も理解した。それでも東京でやり直したい」という場合には、東京で生活保護を申請するという選択肢はあります。
私たちの連携団体でも、池袋などで定期的に相談会を行っています。そこで直接状況を聞き、生活保護の申請などについて一緒に考えられる場合があります。
ただし、相談会に来れば住居やシェルターが確保される、という意味ではありません。その点だけは、東京へ来る前に理解しておいてください。
生活保護は利用したくない(働けるので、住まいだけ何かないか)
「まだ働けるので生活保護は利用したくない。住まいだけ何かないか」というご相談も多くあります。
ただ、「住まいだけ確保する」となると、利用できる公的な選択肢はそれほど多くありません。考えられるのは次の4つですが、どれもストレートには使えません。
TOKYOチャレンジネット
月15万円程度の収入があって住まいがない方に、アパートを3か月貸す、という制度です。内容としては本当にありがたい仕組みなのですが、東京に在住・在勤の実態が長期間ないと使えません。少なくとも、上京してすぐの方は対象になりません。
自立支援センター
東京都が運営している寮、という理解でよいと思います。直近で都内は個室化が進み、以前より使いやすくなりました。
一方で、最初の2週間ほどは仕事に行けない期間があります。また、場所がどこになるかは分かりません。門限などが設定されているところもあります。
相談に行くときは、必ず朝イチで。受け入れ先の空き確認と手続きに時間がかかるため、夕方からでは、その日のうちに入れません(役所の窓口には、必ず「朝イチ」で行ってください)。
区独自の緊急宿泊事業
区の窓口で聞いてみるほかありません。ただ、これも空きが少ないので、必ず使えるとは限りません。どちらにせよ短期間のもので、「ここから働いて生活を立て直す」という性質のものではありません。
こちらも、窓口へ行くのは朝イチで。空きの確認に時間がかかるうえ、そもそも数が少ないため、遅い時間に行くと「今日はもう埋まりました」となりがちです(役所の窓口には、必ず「朝イチ」で行ってください)。
民間支援団体の独自施策
私が知るかぎり、ほとんどが若者(10代後半から20代前半)を対象にしたものです。そしてこれも、空きが少ないか、無い状況です。
住み込みの仕事を自分で見つける以外は、かなり少ない
いずれにせよ、住み込みの仕事を自分で見つける以外の道は、かなり限られているのが現状です。
「すぐに仕事が決まるから」と考えて上京し、仕事が決まらないままネットカフェでお金を使い果たしてしまう方も多くいらっしゃいます。仕事は確かに地方より多いのですが、その分、求職者も多いためです。
だからこそ、身動きが取れなくなる前に、生活保護に切り替えるという考え方も必要かもしれません。
社会福祉協議会(社協)からお金を借りられる?
生活保護は嫌で、かつ仕事もうまくいかない、という方から「ネットで調べたら、社会福祉協議会(社協)からお金を借りられると書いてあった」というご相談もあります。
ただ、基本的には貸してもらえないと考えたほうがよいというのが、私たちが見てきた範囲での実感です。
確かに社協のサイトには「緊急的に小口の資金を貸し付けます」と書かれています。しかし社協は準公的な機関なので、返済能力がある方にしか貸しません。つまり、いま生活に困っている方には貸せない、という構造になっています。実際に借りられた方を、ほとんど見たことがありません。
(コロナ禍のときの特例貸付は別です。あれは例外的な措置でした。)
もうひとつ。こうした貸付は、住民票のある自治体でないと受け付けません。遠方から出てきて都内の社協に相談する、という形は成立しません。
社協を公的制度についての相談窓口として使うのはありですが、各種の貸付は受けられないものとして考えたほうがよいと思います。
まとめ
東京で生活保護を利用して生活を立て直すこと自体は可能です。しかし現在は、
東京に来る → 支援団体のシェルター → すぐアパート
というルートは、ほとんど期待できません。実際には、
東京に来る
→ 住まいのない状態で生活保護を申請
→ 無料低額宿泊所・簡易宿泊所などで最長3か月程度生活
→ そこから福祉事務所と相談しながら物件を探す
→ アパートへ転居(低廉な物件が少ないので、アパート探しだけで追加で数か月)
という流れになる可能性があります。
それでも東京へ来るという判断をするのであれば、「生活保護を申請できるか」だけではなく、「申請後の数か月をどう暮らすのか」まで考えてから動くことをおすすめします。
具体的な相談先は、相談するのページにまとめています。